現代ではウイルスの感染によるものとされていますが、その原因になるウイルスなどは発見されてないものも多く。感染が原因でないものもあるといわれています。
解熱鎮痛消炎剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、消炎酵素剤、鎮咳去痰剤、抗生物質などを症状により用います。
最近では抗ウイルス剤が開発されてきました。ある種(A型、B型)のインフルエンザウイルスは特定診断をしてその薬を使用できます。ハツキリしている場合は大変有効です。今後のさらなる発展に期待したいものです。市販薬には総合感冒剤としての配合がおおいので、病院で処方するものとは配合や量種類に違いがあります。効き目にも違いがありますので、心得ておきましょう。
しかし、西洋医学の治療にも限界があり、結局は対照療法として実際の患者の免疫力によって回復していくのを待っていることになります。よって東洋医学の治療を利用すると、効果的な場合があるわけです。
例えば、SARS(重症急性呼吸器症候群)サーズのような新種のコロナウイルスには現在のところ特効薬はなく、現代医薬で効かないとなると、どうしたら良いのでしょうか?西洋医学的治療を行ったり、中国ではそんな時に漢方処方で、体力をつけ、免疫力を最大に高めながら症状にあわせて治療する漢方薬をもちいました。又、サーズにかかりづらい体力をつけるためにと市民がさらに漢方薬を服用したため、一部の地域で漢方薬が不足したというニュースが話題になりました。
抗生物質は細菌には有効ですがウイルスには効果がないので、抗生物質を使う場合は風邪ウイルス感染のあとで、細菌に感染してしまう場合の二次感染を想定して用いています。しかし、ある研究者達は、抗生物質の乱用でますます細菌の耐性ができ、強くなってきていると指摘しています。抗生物質一つとっても初めて開発した頃は少量単位ですんだものが現代では何万単位でなければ、効かなくなってきています。今までの抗生物質では全く効果がなくなった菌も出てきました。
しかし、症状、証によって処方が変わる自然の生薬を使った漢方薬は細菌やウイルスもその情報を覚えづらいために、耐性がおこりづらく、昔ながらの処方でも効果があるのだとも言われています。この辺は漢方薬を使う上での注目すべき利点といえます。
「弁証論治」とは症状の分析から改善にいたるまでを決定する方法で、中医学独特の療法体系です。「証」にもとづく改善方法を形成して、「弁証」は改善法と使用薬物を決めるための根拠としています。「論治」とは、弁証によって得られた情報、結果にもとづき、それに相応する改善方法を検討して決定し、施行することです。
弁証論治によって体調・体質を分析し、改善薬や改善法を考えます。
感冒にたいする中医学の弁証論治 (中医学内科の教科書より基本的分類)
外感感冒
風寒証 |
辛温解表 |
麻黄湯、桂枝湯、荊防敗毒散 |
風熱証 |
辛温解表 |
桑菊飲、銀翹散、葱鼓桔梗湯 |
暑湿証 |
清暑去湿解表 |
新加香儒飲 |
体虚感冒
気虚感冒 |
益気解表 |
人参敗毒散、参蘇飲、補中益気湯、玉屏風散 |
陽虚感冒 |
助陽解表 |
参附再造丸加減、麻黄附子細辛湯 |
血虚感冒 |
養血解表 |
葱白七味飲加減 |
陰虚感冒 |
滋陰解表 |
加減玉竹湯 |
弁証論治とは実はかなり柔軟にものを見てゆきますので、一定の証は決まっても改善する薬はそれのみと固定されるものではなく、一人一人のその症状にあわせ柔軟に対応、変化、駆使していくものです。
他に、麻黄附子細辛湯、香蘇散、小青竜湯、麻黄湯、葛根湯、升麻葛根湯、真武湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴胡桂枝湯、小柴胡湯、補中益気湯、参蘇飲、神秘湯、麦門冬湯、竹茹温胆湯、なども証によって使い分けます。
弁証によって配穴をわりだし、補瀉療法することになります。
風寒証 |
宣肺解表 |
疏表去邪 |
合谷、風門、肺兪 |
風熱証 |
宣肺解表 |
疏表去邪 |
合谷、風門、肺兪 |
暑湿証 |
宣肺解表 |
疏表去邪 |
合谷、風門、肺兪 |
気虚証 |
扶正去邪 |
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足三里、気海、関元 |
その他一般的に使われるツボとして、風池、感冒点、阿是穴、鼻通、晴明穴などがあるので、按摩、点穴、マッサージを利用するなどして刺激するだけでも、一定の効果があります。
中医学の弁証論治にのっとり、功法を選択し、その人の症状に合わせた気功法の練功をします。感冒の初期や後期には効果が実感されます。予防の効果がありますが、初期や後期には治りをはやめます。
これは一例ですが、風熱証の場合は、練功前に経絡にのっとったツボと経絡を瀉法で按摩、マッサージしてほぐします。実している場合は凝りがひどいものです。東洋医学では肺は西方向を意味しますので、西方を向いて練功したり、厳密にはマッサージ回数や練功を行う時間なども、東洋医学的には明確に行います。
調身、調心、調息をもちいて、約30分くらい行う。六字訣養生功をもちいて肺経の音を発音するか、黙念します。収功は丹田に気をもどし、経絡治療と同様に経絡とツボを考慮して瀉法でマッサージをします。
これ以外の方法として、動功をもちいた簡単な呼吸法もあります。しかし、激しい発熱のときや不快感の強いときはさけます。風邪の場合は引き始めと治りかけた時のタイミングをとらえて行うとより効果的です。動功を用いて風邪によって固まった筋肉をほぐし軟らかくすることで、新陳代謝も良くなり、熱が多少ある場合などでも発汗とともに熱が放散されることになります。東洋医学的には外邪が汗とともに排出されたとし、西洋医学的には免疫力をたかめて治りを早めたことになるわけです。このときに熱い緑茶をのんだり、おかゆを食べておこなうと発汗力はさらによく、お茶に含まれるミネラル、ビタミン、カフェインなどもほど良く作用します。
又、日頃の練功によって、風邪にかかりづらい体にすることが出来ます。感冒における気功法は呼吸法でありますから、中医学では「肺は皮毛を司る」と言うように、肺をつかい皮膚呼吸も全身をつかうことになるので中医学的にも理にかなっています。
一例ですが感冒にかかった時に中国緑茶の龍井茶をのんで、全身運動をして汗をビッショリかいて、タオルですぐにふき取ります。体力の多少ある内はこれを何回か繰り返せばほとんど治ってしまいます。又は漢方薬のエキスを飲んで行うと効果はもっとはっきりするでしょう。
西洋医学的な栄養学と東洋医学的な食養学を考慮して食事指導をします。中医学では弁証論治にのっとり、分類したスープ、お茶、粥などをつくります。
体力を取り戻すために栄養をたっぷり取る。風邪をひいて発熱している時には、体内のたんぱく質やビタミン類などの栄養素が、かなり消耗するので、食事をしっかりと取ること。食欲も低下し胃腸の消化器官も衰えてくるので、お粥や消化の良い魚や卵をスープにするなど工夫すると良いでしょう。牛乳、紅茶、コーヒー、砂糖を多めに入れて飲むと効率のよいエネルギー補給ができます。
ビタミンCは免疫力を高め、ストレスを鎮静するので、予防にも治療にも効果的といわれています。
ブロッコリー、キウイ、柿、イチゴ、カリフラワー、芽キャベツ、赤ピーマンなどを生ジュースにして飲むと良いです。
しかし、ビタミンCは熱に弱いので、長時間かけて煮込む料理はさけ、短時間での炒め料理にする方が有効だといえます。
医食同源、薬食同源と言うように、食料理に中薬、中草薬(ハーブ、民間薬)を加えて用いたりします。
生薬、ハーブ、民間薬などを、症状の弁証分類により利用することができます。
風寒証には |
→ |
生姜、紫蘇葉、長ねぎ、桂枝、桂皮、杏仁などを利用する。 |
風熱証には |
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なしの皮、ごぼう、淡豆し、桑の葉、くず粉、菊の花、薄荷、大根、などを利用する。 |
暑湿証には |
→ |
かっ香、はすの葉、あおよもぎ、緑豆、などを利用する。 |
正気不足、体力不足で日頃から繰り返し風邪を引くような、虚弱者には |
気虚感冒 |
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人参、黄耆、白朮、党参などと風寒証にたいする生薬などを利用する。 |
陰虚感冒 |
→ |
玉竹、沙参、麦門冬などと風熱証にたいする生薬などを利用する。 |
お茶や粥などにして用いたりします。
葛湯(クズユ)市販のクズを小匙一杯を茶碗に入れて、少量の水で溶いてから、コップ一杯の熱湯を注ぎ、透明になるまで良くかき混ぜる。黒蜜か砂糖や、ショウガをおろして入れれば、ショウガクズ湯のできあがり。体が芯から温まる感じがします。シナモンを入れるともっと良くなります。血行がよくなり、肩首のパンパンに張ったと凝りも楽になります。発汗作用を利用して、風邪の初期にはこれのみで良く治るときがあります。葛根湯エキス顆粒を一包加えると,葛根湯エキス顆粒が良く効くことになります。何故なら、葛根湯の処方の中には葛根(クズ)、生姜(ショウガ)桂皮(、シナモン)が入っているからです。冷え、寒さを感じる風邪には体が温まります。
その他に、卵酒療法や梅干の黒焼を用いる方法もあります。
基本的には安静と保温。睡眠をよくとることが重要。充分な睡眠は健康維持でも三大要素の一つです。体力のある内なら発汗作用を利用したり、気功法やハーブティ、粥などを利用してゆくのも良いでしょう。
風邪は万病の元というのは本当のことです。風邪の予後を甘く見ると風邪から腎炎を起こす場合もあります。最後まできちっとした治療が重要です。また、養生が悪く無理をし続けたりして、西洋薬治療をしているにもかかわらず、こじらせて何ヶ月も風邪がぬけずに咳がつづいたりしている患者さんがいます。そんな時は漢方薬で体力をつけながら治療してゆきます。すると序序に治っていく場合があります。
風邪の治療予防にかぎらず、私達は誰しもよけいな医療費をかけたくないし、無駄な時間や苦痛を味わいたくないはずです。そんな意味でも、未病治療と予防の考え方は重要だと思います。日頃の風邪にかからない体力づくりと予防対策をよく把握していることがいかに大切かということになります。
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