5月の養生法は「疏肝・そかん」と「健脾・けんぴ」でいきましょう。下の図、東洋医学の陰陽五行説の図です。
春は陽気が増し、新緑・樹木旺盛になってきます。それを象徴として「木」としています。「風」が吹くように動きが活発になり変動・流動が激しい時期でもあります。
自然界がそのように変化しますと、五臓六腑では「肝・胆」の働きが影響をうけるとされ、気・血・水の新陳代謝に関わり、精神的な部分の情緒にも影響がでます。
体が硬く普段から運動不足の方は体を伸ばそうとするように、はけ口を求めてイライラ・緊張・鬱々・不安などの症状があらわれやすい季節です。
「木」が燃えて「火」になるように ⇒「相生・生み出す関係」に「火」があります。 ⇒ 相克・抑える関係に「土」(胃腸・消化器系の働き)があります。
「疏肝・そかんする」(気・血・水の代謝を良くし、精神的には情緒を安定させます)。「健脾・けんぴ する」 (胃腸・消化器系の働きを良くする)ことが大切になります。
春の食養生のポイント
@「香りのよい食材」で気の巡りをよくする。
A刺激物や高脂肪食は避け、「さっぱりした味付け」を基本にする。
B胃腸の働きを助ける「自然の甘み」をとりいれる。
C偏りのないよう「多くの食材」を「少量ずつ」とる。
D「解毒作用」のある食材をとる。
※ 春の肝気の高ぶりが、胃腸に影響を与えます。
ストレスや緊張からくる下痢や腹痛、胃痛、食欲不振などを東洋医学では「肝脾不和(かんぴふわ)」といいます。気功法や瞑想法による精神のリラクゼーションとともに、気の巡りを良くするシソやハッカ、ミョウガ、ミツバなど香りのよい食材を選びましょう。
※ 連休中は元気いっぱい♪お休みが開けてから疲れがどっと出てくる方は、脾の機能を高め、たくさんの「気」を補充しましょう。
キーワードは、「補気健脾(ほきけんぴ)」です。滋養強壮の王様、オタネニンジン(朝鮮人参)やヤマイモ、アワやキビなどの雑穀、美容にもいいナツメなどがおすすめです。
※ 雨の日に体調を崩しやすい方のキーワードは、「燥湿健脾(そうしつけんぴ)」です。
東洋医学には「脾は湿を嫌う」という考え方があります。平素より軟便気味であったり、むくみやすかったり、あるいはからだが冷えるといった方は水の巡りが悪く、雨の日には脾が影響を受けます。水分代謝を高めて脾を元気にしてくれるハスの実やハトムギ、アズキ、海藻などの食材を選んでみましょう。
「疏肝・そかんする」(気・血・水の代謝を良くし、精神的には情緒を安定させます)。
「健脾・けんぴ する」 (胃腸・消化器系の働きを良くする)ことが大切になります。
赤紫蘇(あかしそ)
紫蘇の独特の香りは気の巡りをよくし、ストレスやイライラ、不安感、喉の詰まった感じを改善してくれます。
[利用方法]
紫蘇茶や紫蘇ジュースとしていただきましょう。
陳皮(ちんぴ)
みかんの皮を乾燥したものです。爽やかな香りが気の巡りを改善し、胃腸の働きを助けます。
[利用方法]
調味料としてスープや煮物に入れてみましょう。お茶としていただくのもおいしいです。
胃腸の調子を整えて体力を回復する作用があり、滋養強壮などの効果が期待できます。また、気持ちの落ち込みやイライラ、不眠などの心のトラブルも解消してくれます。
[利用方法]
おかゆやお茶としていただきましょう。ドライフルーツとしてそのまま召し上がるのも手軽でおすすめです。
菊の花を乾燥したものです。爽やかな香りと心地よい苦みで気の巡りを整え、優れた解毒作用をもちます。
肝の高ぶりによるイライラや目の充血におすすめです。
[利用方法]
香りを存分に楽しめるお茶としていただくのがおすすめ。ウーロン茶などとブレンドすると飲みやすくなります
桑の葉(くわのは)
健康食品として人気の高い桑の葉。血糖値を改善する効果が注目されています。漢方では肝と肺に働きかけ、目の充血や喉の違和感をすっきりさせてくれます。
[利用方法]
食前のお茶としていただきましょう。
体の余分な熱を去る働きがあるので春〜夏におすすめです。
その他の春におすすめの食材
胃腸を助ける甘みの食材
粟(あわ)、麦、米、黍(きび)、にんじん、きゃべつ、
たけのこ、豆類、ハスの実
解毒作用のある食材
菜の花、春菊、うどなどの山菜
セロリ、パセリ、みつばなどの香味野菜
精神面の疲労があるときには、手軽に薬膳茶としての利用がおすすめです。
蒸気とともに立ち上る爽やかな香りを存分に楽しみましょう。
弱った胃腸を助け元気をつけたいときには、
柔らかく煮込むのがおすすめ。お米と一緒に炊いてお粥にしてみたり、お野菜やお肉と一緒に薬膳スープを作ってみたりしてみましょう。
ストレス、イライラ、不安に
赤紫蘇 + 陳皮
赤紫蘇 + 薄荷(はっか)
菊花 + 薄荷
花粉症、目のかゆみや充血、喉の違和感に
菊花 + 桑の葉 + 薄荷
気の巡りを改善し胃腸をサポート
赤紫蘇 + 陳皮
陳皮 + 大棗
胃腸をサポートし、精神を安定させる
大棗 + 御種人参(オタネニンジン、高麗人参)
おすすめの漢方薬 服用しやすいエキス顆粒などもあります。 |
※ 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
疲労・衰弱している人の気力と体力を補う気血双補(きけつそうほ)の代表的な漢方薬です。血を補う「四物湯」と気を補う「四君子湯」を合わせ、さらに黄耆と桂皮を加えた処方です。病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血の治療に使用されます。
※香砂養胃丸(こうしゃよういがん)
胃の機能を高める「平胃散」と気を補う「四君子湯」を合方したものに、胃腸の働きをよくする香附子、縮砂、木香、白豆蔲を加えた漢方胃腸薬です。胃弱、胃腸虚弱、慢性胃腸炎、食欲不振の改善に効果があります。
※加味帰脾湯(かみきひとう)
帰脾とは、「脾」を本来の元気な状態へ「帰す」という意味です。胃腸の機能を高める生薬に、精神を安定させる生薬を組み合わせた処方です。虚弱体質で血色の悪い方の貧血、不眠症、精神不安、神経症に効果があります。
※苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
「水」を巡らせ、「気」の逆流を改善する漢方処方です。茯苓、桂皮、蒼朮、甘草と4種類の生薬からなるシンプルな処方ですが、大変に優秀な処方です。神経症、いらいら、めまい、どうき、息切れ、頭痛の治療に使用されます。
※六君子湯(りっくんしとう)
虚証の人に使われる代表的な胃腸薬です。気を補う「四君子湯」に水の停滞を改善する「二陳湯」を合わせた処方です。やせ型で顔色が悪く、冷えやすく、みぞおちのつかえ、全身倦怠感のある人の食欲不振、胃もたれ、胃痛、嘔吐などが処方の目安とされています。胃下垂、消化不良などにも用いられます。